日記:その⑮
バレンタインというイベントに対しては複雑な感情を持っている。己を主体とした恋愛に嫌悪感がある現在の私にとっては世の(異)性愛規範がマシマシになる胸糞悪いイベントであり、また高校時代の自分にとっては義務としての手作りスイーツ生産の重荷を背負わされる苦悩の時期である一方、ゴージャスで魅力的なチョコレートたちがデパ地下にばんばか並びまくる最高の期間でもある。今はバレンタイン=自分のために美味いチョコを買うイベントという価値観もかなりメジャーになってきているし、私もせっかくなら何か良いチョコを買おうとしたのだが、普通に財力が追いついてなくてダメだった。なにせ無職だからな……
私は女子校と呼ばれるジャンルの高校を出ているのだが、そこでのバレンタインはかなり壮絶なものだった。とにかくクラスのほぼ全員が手作りのスイーツを持ち寄り、グループ、時にはクラスまでも跨いでお互いの成果物を食わせ合うのである。普段全く料理してないとかそういうことは言い訳にならず、よっぽど部活で忙しいとかそういう事情がない限り市販品を持ってくる人はいなかった(それでも運動部でめちゃくちゃ忙しそうな人に限ってクオリティの高いものを大量に生産してきたりする、怖い)。今思えば異様に自らキッチンに立って作ったものにこだわるあの空気には、女子高校生がなぜかわざわざ「JK」を自称して自分たちを世間に求められる型にはめたがるアレと同じようなものを感じなくもないが、当時の自分にとってはかなり切実な問題だった。ロクに仲良くもない奴らのためにわざわざ何か手作りしないと浮くとか意味分かんねえよ、ただでさえ既に浮いてるせいで友達いないんだから……
という葛藤に苦しんだ結果、当時大学生だった姉に1000円渡してチョコがけのラスクを作ってもらった。対して好きじゃないクラスメイトに払う無駄な労力が1000円の重みを遥かに上回ったのだった。持つべきは対価次第で動く身内。
ここまでのダラダラした陰鬱ぼっち学生エピソードで何を伝えたかったのかというと、つまり私は菓子作りの経験がほぼ皆無だということだ。それなのに知り合って4年目に突入しようかという友人たちといきなり今年のバレンタインに何かしらの菓子を作って交換することになったからさあ大変。もうとっくに高校卒業した直後の初々しさも消滅しとんのに今更⁉️⁉️姉は一人暮らしで頼れないし、流石にいい歳なんだから一人で何か生産できるところを見せたいし、一体どうすれば!?
よし!!!!!!!食紅ドバドバ入れてキショい色になったクッキー作ろう!!!!!!!!!!
食紅ドバドバ入れてキショい色になったクッキーを作ることにしました。なぜなら味が最悪でもキモい色の効果ということにできるので。
とりあえず近所のスーパーでクッキーミックス(卵とバターを加えればクッキー生地ができる優れもの)と食紅を購入したので準備は整った!やっていくぞ!人生初の製菓を……!!
~食紅ドバドバキショクッキーの材料〜
・クッキーミックス400g
・無塩バター160g
・全卵 50g(1個)
・食紅 あるだけ これで結構な量ができる。
~クッキーミックスの袋に書いてあった手順~
①:食紅以外の材料をボウルにあけ、粉っぽさがなくなるまでゴムベラか木べらで混ぜる。
よーし!いっちょやっていくか〜〜〜!!!
あれ?下準備:卵とバターは室温に戻しておく。って書いてあるぞ。めちゃめちゃ冷たいなバターと卵。スタート以前の段階で躓いてしまった。下準備を①に含めてくれよ!!!!数字の1が書いてあったらまずそこから読んじゃうんだよ!!!
ここでモチャモチャしていたら横から見ていた親にめちゃくちゃ怒られた。私の人生はこういうバグの積み重ねでできています。ちなみに卵はボウルに入れて水とお湯で人肌になるまであっためる、バターは200wのレンジで5秒ずつチンすることで室温にできるんだって。クラシルの人ありがと〜
え?粉じゃん キショ!
結構混ぜたつもりなのに全然粉だしなんかバターがめちゃくちゃダマになってるしもうダメなんじゃないかこれ…?無塩バターの量を見誤ってて10gだけ有塩バター入れちゃったし途中から200wでチンするのめんどくさくなって500wでチンしちゃったし、もうすでにこのクッキーの秩序は崩壊してるのかもしれん。終わりだ。
終わりじゃなかった!!!!!!!
半泣きになりながらひたすらに木べらをゴリゴリしていたらなんだか粉っぽくなくなりました。もうこの段階でクッキーを感じる。粉すげ〜。「粉っぽさがなくなる」ってガバガバすぎだろタイミングが分からんわ、と思っていたのですが、だんだんクッキー生地の粘性が増してきて最終的に木べらで混ぜることが物理的に不可能になる段階にまで達するので、たぶんそこが基準なんじゃないかと思います。
②粉がまとまったらなめらかになるまで手でこねて、30分から1時間冷蔵庫で寝かす。
よし!ここで生地を4等分ぐらいにして、それぞれに食紅をドバーーーーッ!!!
食紅って粉末なんだな〜〜(無知) ぶっかけたらとにかく色が馴染むまで揉みまくります。かなり思い切った量を入れないと想像したような鮮やかな色にならないのでここでは躊躇いは捨てよう。というか変にこういうところで日和ると
このように本当に毒入りみたいなキショい色になってしまうので気にせずぶち込みまくったほうがいい。これは紫なんだけど最終的にメタモンぐらいの色にしたら逆に美味しそうになりました。
あと食紅って粉末の色と実際に出る色に結構差があるというか、具体的に言うと赤色の食紅の粉末の色が完全に紫だったりするので、複数色使う時は瓶の蓋とかに色を記載していた方が混乱が少なくていいかも。最初に赤の食紅入れたときあまりにも紫すぎて「間違えた!!!!ヤバい!!!!」とシンクに捨てたら水に溶けてマジの殺人現場みたいになったから本当に気をつけてください。本当に血にしか見えなくて怖い&写真撮ったら生ゴミが映りこんだので写真は割愛。
最終的にこんな色合いになったよ!プレーンのが混ざってるのは家族の抵抗にあったからです。
③延べ棒で5ミリの厚さに伸ばしたあと、一枚一枚切り分けたらクッキングシートに並べて、170°に余熱したオーブンで13分焼く。完成!
ウオオオオオーーーーー!!!形成するぞーーーーー!!!!
と思ったらクッキー型が全然足りないな。キッチンの棚をほじくり返したらなんとか猫の形と星の形のクッキー型は発掘できたんだけど、これだけだとちょっと寂しいので急遽お雑煮に入れる大根とか人参とかかまぼことかをカットする用のやつを使うことにした。松竹梅で急におめでたいな。
で、このカットの工程がま〜〜〜〜大変。冷やしていた生地が人間の手によってどんどん温まって柔らかくなっていってしまうせいで型で抜く→生地から切り離して並べる という一連の動きがめちゃくちゃ難しい。猫の首はもげまくるし、星のつもりで抜いたのが色も相まってサンゴを貪り食らうタイプのヒトデになるしで辛かった。
焼く前の生地を並べるとこんな感じ。途中からめんどくさくなって型とか関係なしに工作したのがいくつかあるな。その点松竹梅は細いパーツが少なくて型取り安かった気がするので、みなさんもクッキー作りの際はぜひ松竹梅の導入を考えてみてください。めでたいし。
あとはこいつらをまとめてオーブンに放り込んで待つだけ!大量の食紅と作り手の不注意を多分に含んだこのクッキー、果たしてまともに焼き上がることができるのか?
焼き上がった!!!!!!!!!食紅ドバドバキショクッキーが!!!!!!!
予想より全然綺麗な色に焼きあがってるし、膨張して形がめちゃくちゃにもなってないしでよい出来と言えるのでは!?恐る恐る食ってみたら味も異常なく、普通に食えるクッキーだった。製菓未経験の人間が雑に作ってもこの味になるんだから本当に粉がすげえ。偏にこの粉がすごいことに尽きる。
あと、カラフルな食紅を使うことでこういう遊びもできるようになります。
え!?!?!?一カラのオタク!?!?!?
食紅に青と紫を採用した&松竹梅の型を使ったという偶然によって、古傷を抉るような推しカプ再現クッキーが産み落とされてしまった。みんなも松竹梅の型を使ってレッツクッキン!
私は一生こんな感じの陰気で粘着質な年下×鈍感で明るい年上のカップリングを擦って生きていくのかもしれません。助けて〜
というわけで無事に食紅ドバドバキショクッキーは完成し、それを友達と楽しく交換できた上になぜだかフレイザードちゃんの超絶激カワイラストまでもらってしまって、今年の2/14は史上最高のバレンタインと呼べるものになったかもしれない。やっぱり自分の意思で、自分が渡したい人に向かってお菓子を作るのって楽しいね。
あとお菓子作りって将来に繋がる活動全くやってなくても「何かした感」を満たしてくれるし親もいい感じに騙されてくれるのでそういう面でもオススメです。誰も目の前でお菓子を焼いてる人間を叱ることはできないので、全国の無職は俺と一生にクッキーを焼こう。
おやすみなさい。